【開催報告】「SFT未来会議 ~愛知・名古屋2026大会を契機としたスポーツ国際交流・協力の実践とこれから~」
2026年10月15日
官民協働でスポーツ国際交流・協力を推進するスポーツ・フォー・トゥモロー・コンソーシアム(SFTC事務局:独立行政法人日本スポーツ振興センター)は、独立行政法人国際協力機構(JICA)との共催により、2026年9月27日(日)に「SFT未来会議 ~愛知・名古屋2026大会を契機としたスポーツ国際交流・協力の実践とこれから~」を開催いたしました。
本イベントには、愛知・名古屋2026大会に関連した国際交流・協力、多文化共生等に取り組む関係者をはじめ、地方自治体、スポーツ団体、企業、大学・研究機関、NPO/NGO、JICA海外協力隊経験者、学生・ユースなど、多様な主体から67名が会場(JICA中部 なごや地球ひろば)に一堂に会しました。
愛知・名古屋2026大会を一つの契機として、スポーツを通じた国際交流・協力や多文化共生、地域交流の意義や今後の展開について考えると同時に、パネル展示・発表や参加者同士のネットワーキングを通じて、大会の先にも続く新たなつながりや連携・協働を生み出す機会となりました。
【開催概要】SFT未来会議~愛知・名古屋2026大会を契機としたスポーツ国際交流・協力の実践とこれから~
■ オープニング
河合 純一 氏(スポーツ庁長官)による開会挨拶
主催者を代表して、スポーツを通じた国際交流・協力や地域連携に携わる参加者へ開会の挨拶を述べました。愛知・名古屋2026大会の開催を一つの大きな節目として、これまでの草の根の実践や知見を結集し、大会のその先へと続く持続可能なスポーツ国際協力のあり方をともに考えていくことへの期待が示されました。


■ 第1部:基調セッション
テーマ:愛知・名古屋2026大会を一つの契機としたスポーツを通じた国際交流・協力や多文化共生等の取組について、その意義や社会にもたらす価値を多様な視点から考える
①寺田 恭子 氏(桜花学園大学 教育保育学部 国際教養こども学科 教授/認定NPO法人アジア車いす交流センター(WAFCA)理事長)
「スポーツを通じた国際交流・協力と共生社会 ―研究と実践から捉える大会レガシー」
愛知県の「大会を活用した地域活性化ビジョン」に触れるとともに、ものづくり文化や地域産業(愛知県企業の海外拠点のアジア集中など)を背景に、アジアとの強固なつながりを持つ地域の特性を紹介し、NPO/NGOをはじめとする草の根の活動が「一人ひとりの小さな声や課題」に寄り添い、人と人との持続的な関係性を築く重要性を提示。障害児者の支援を包括的に捉える「6つのF-words」(Function, Family, Fitness, Fun, Friends, Future)がすべてスポーツとつながっていることを示し、タイやインドネシアでの車いすダンスの実践・研究成果(最重度障害児・者のQOL向上やトレーニング効果)を紹介しました。行政・企業・大学・NPO・市民・アスリートなど多様な主体がそれぞれの強みで連携し、スポーツを軸とした「点から面へのつながり」を作ることこそが、大会後にも残る大切なレガシーになると語りました。


②三阪 洋行 氏(公益財団法人日本パラスポーツ協会 日本パラリンピック委員会委員長/公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会 アスリート委員会副委員長)
「アスリートの視点から考える大会レガシー ―スポーツが社会にもたらす価値」
自身の車いすラグビー選手・指導者としての歩みを振り返り、障害を負い社会との接点を失いかけた中でスポーツと出会い、多様な文化や価値観を持つ人々とつながることで人生や社会との関係性が大きく変化した体験を共有。大会レガシーとは単なるインフラ整備だけでなく、「人の心や行動の中に残る変化や仕組み」であると定義。アスリートを受動的な存在ではなく「大会づくりや社会変革の主体的パートナー」として捉え、既存ホテルのアクセシビリティ改修などの現場検証に当事者の知見を活かしている事例を紹介しました。大会の閉会式はゴールではなく新たな挑戦のスタートであり、スポーツが生み出した人々のつながりや一歩踏み出す挑戦を次の世代や地域へ波及させていく重要性を訴えました。


■ SFTユースメディアプログラム 活動紹介
SFTユースメディアプログラム ユースレポーター(中京大学、名城大学、愛知淑徳大学等の学生6名で構成)
「学生の視点で地域のスポーツを通じた国際交流・協力を国内外へ発信する」ことを目的に始動した本プログラムの取組を発表。味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)やヨハン・クライフ財団が整備した「スペシャルクライフコート」などのパラスポーツ施設への視察取材事例を紹介しました。東京2020大会のレガシーツアー取材等を通して「レガシーとは競技者や大会期間中のためだけのものではなく、大会後にその地域や人々に何が残るかという視点が不可欠である」という気づきを獲得。「スポーツの価値」や「社会とのつながり」を学び、自らが将来の持続可能な社会づくりの担い手として多様な価値を広めていきたいという力強い意気込みが示されました。取材記事はSFT公式noteにて継続発信しています。
<SFTユースメディアプログラムの記事はこちら>
https://note.com/sportfortomorrow

■ 第2部:パネル展示・発表
SFTC会員や関係団体など計21団体によるパネル展示・ショート発表が行われ、アジア各国との草の根のスポーツ交流をはじめ、パラスポーツを含む競技の普及・強化、人材育成、多文化共生に向けた多様な実践と成果が紹介されました。展示の前では、参加者と出展団体が直接言葉を交わすなど、所属や分野を越えた交流も行われました。
- 大崎町(鹿児島県): 東京2020大会のホストタウン事業を契機に始まった台湾陸上ナショナルチームとの事前合宿交流について紹介。これまで計7回の合宿を実施し、トップアスリートだけでなくジュニア年代との交流にも発展していることを紹介。
- 名古屋市(愛知県): 「フレンドシップ事業」として、アジア競技大会・アジアパラ競技大会の出場選手を小学校や地域に招き、子供たちとの直接交流を通じて障害理解や国際理解を育む教育的取組を報告。
- 日本フェンシング協会: アジア・アフリカの途上国(カンボジア、セネガル、モンゴル、キルギス等)へのコーチ派遣や用具支援、技術指導を通じて、競技普及とともにスポーツマンシップや友情を育む国際貢献活動を発表。
- 認定NPO法人アジア車いす交流センター(WAFCA): 愛知県内の特別支援学校の児童生徒とタイ・インドネシアの子どもたちが連携し、大会のオープニングイベントで車いすダンスを披露するプロジェクト(刈谷市・安城市・大府市等での展開)を発表。
- フレンズクラブ: 地域で40年以上続く水泳クラブの活動から発展し、ネパールの水泳選手や関係者との持続的な交流・指導支援を展開。震災を乗り越えた選手へのサポートや、ロサンゼルス2028大会を見据えた人づくり・草の根の国際交流について報告。
- パラフォト(PARAPHOTO): パラスポーツの現地取材と情報発信を行う中で、AI時代だからこそ「現地で人の声を直接聞き、本物の感情や生の言葉を届ける取材」の価値について考える活動を発信。








<第2部 パネル展示団体のポスター資料はこちら>
■ 第3部:事例紹介・トークセッション
テーマ: 実践から考える、スポーツ国際交流・協力と多文化共生のこれから
ファシリテーター: 坂口 麻衣 氏(公益財団法人日本ラグビーフットボール協会 普及育成部門 国際協力担当)
【事例発表内容】
- 日本ラグビーフットボール協会(坂口 麻衣 氏|ファシリテーター)
2019年ラグビーW杯のレガシー事業「アジアンスクラムプロジェクト」の一環として、アジア各地で次世代リーダーを育成する「アジアユースリーダーシッププログラム」を展開。単なる競技普及にとどまらず、若者が自ら地域課題を解決するプロジェクトを立ち上げる継続的な仕組みづくりと、ユースの声を意思決定層へ届ける取組について紹介しました。
- 株式会社Xiborg(遠藤 謙 氏)
競技用義足(ブレード)の開発や途上国(タイ・カンボジア・ラオス等)での義肢装具士・医療スタッフ向けワークショップ、選手育成の事例を発表。アジア圏におけるパラスポーツ環境の課題を指摘しつつ、「Blade for All」(走りの民主化)を通じた日常的な運動環境の整備や、2026年10月に予定されている「Asia Universal Running Fes(アジアユニバーサルランニングフェス)」などの取組について語りました。
- 一般社団法人日本車いすラグビー連盟(三阪 洋行 氏)
アジア地域(タイ、韓国、シンガポール、マレーシア等)における車いすラグビーの立ち上げや普及支援の軌跡を紹介。競技用車いすの高価格化や重度障害者の参加ハードルといった課題に対し、現地のニーズに応じた技術指導や審判・クラス分け人材の育成を実施。一時的な大会参加で終わらせず、自立的な競技団体の運営や当事者の社会参加へとつなげる「継続的な基盤づくり」の重要性を訴えました。
- JICA海外協力隊(菊地 友輝 氏/2023年度4次隊 ラオス 柔道)
ラオス日本武道センターを拠点とした柔道ナショナルチームやジュニア世代への指導実践を報告。言葉や文化、生活習慣の違いに向き合いながら、挨拶や礼儀、メンタリティの育成を含めたコーチングを展開。アジア競技大会に向けた選手強化(天理大学等での日本合宿)と、長期的な育成体制の確立に向けた取組を伝えました。
- 美浜町(服部 沙織 氏、ヴァスナニ・ジョティ・ヴィノド 氏)
美浜町出身の幕末の漂流者・山本音吉がシンガポールに定住した初の日本人である歴史的縁から始まった、シンガポールとの長年にわたるホストタウン事業・国際交流事業の実践を紹介。小・中学生や大学生の相互派遣、スポーツ鬼ごっこやモルックを通じた草の根交流、和菓子や食文化を紹介する文化交流など、言語の壁を越えて町民と海外の人々が自然に絆を深める地域主導の多文化共生・国際交流の魅力を発表しました。


【ディスカッション・質疑応答】
〇多様性と寄り添い: アジア各国・地域で支援や交流を行う際は、一方的な成功体験の押し付けではなく、現地の宗教・文化・生活様式や当事者の課題に柔軟に寄り添い、目的を共有する対話(コミュニケーション)が鍵になることが議論されました。
〇多文化共生とスポーツの力: スポーツは言語や政治的対立、障害の有無といった障壁を飛び越え、対等にリスペクトし合えるプラットフォームであるという共通認識が示されました。パラスポーツを通じて障害者に対する社会の見方が「支援される存在」から「挑戦するアスリート・パートナー」へと変化していくプロセスの重要性が確認されました。
■ クロージング
上町 透 氏(JICA中部センター 所長)による閉会挨拶
本イベントへの登壇者・参加者への感謝を述べるとともに、JICA海外協力隊によるスポーツを通じた途上国支援の歴史や現場のストーリー(ラオスでの柔道支援、インパールでの車いすラグビー立ち上げへの関わりなど)に言及。スポーツは単なる身体運動にとどまらず、人々に生きる希望や自信を与え、人と人、地域と地域、国と国を強固に結びつける不可欠な「国際協力の力」を持っていると総括。愛知・名古屋2026大会の開催を大きな契機とし、官民・地域が一体となって大会の先にある持続可能な国際交流と共生社会の実現へ向けて歩みを進めていこうと呼びかけ、閉会しました。

<参加者の声>
〇スポーツは言葉を超えて人と人をつなぐものであり、JICAのODA事業における『人と人とのつながりの象徴』である協力隊事業と非常に親和性が高いと確信いたしました。
JICAでは重要課題として『スポーツと開発』を掲げ、世界的にも独自性の高い形でスポーツを通じた途上国支援を推進しています。現地で活動を終えた隊員たちが国内・海外問わず多様な形で社会還元し、相手国を元気にする活動へ挑み続けてくれることを心から期待し、応援しております。
〇パラスポーツに実際に関わる中で、自分の中にあった思い込みが覆され『関わることの大切さ』を改めて実感いたしました。スポーツは単に勝敗を競うだけでなく、負けて学ぶことや人とのつながりを生み出し、当事者が社会に参画する大きなきっかけになります。2年9ヶ月のインドでのパラ柔道指導を振り返り、今後も何らかの形で持続的に現地に関わり続けていきたいです。
〇スポーツを通して人とのつながりが生まれる素晴らしさを改めて強く実感いたしました。普段は海外で柔道を指導し言語の壁を越えた交流を体感していますが、今回のイベントで障害のある方に関わる多様な実践を聞き、スポーツの持つ大きな可能性を再確認できました。
また、自身の地元である愛知で開催される大会にマレーシア代表のコーチとして参加できることを誇りに思います。
〇未来会議への参加を通じて、多分野の支援や協力が重なり合って大会が成り立っていること、そしてスポーツの可能性の大きさを学びました。私たちは学生ならではの視点を大切に、環境への配慮(アップサイクルなど)や目に見えにくい『ソフトレガシー』に焦点を当てて取材を重ねています。
当事者意識を持ち多様な人々の声を発信していくことで、スポーツや大会の価値を多くの人に広め、社会の認識を変えていけるようなきっかけをつくっていきたいです。
〇最初はアジア大会もどこか遠い出来事のように感じていましたが、実際に会場へ足を運び、大会を契機に発展的な取組をされている実践者の皆さんと出会えたことで、初めて身近なものとして感じられるようになりました。イベントに関わり直接触れ合うことの大切さを実感したと同時に、第2部で紹介された車椅子ダンスのように『自分の専門性をどのように活かし、スポーツの可能性を広げて社会に貢献できるか』を改めて捉え直す大変貴重な機会となりました。
<関係者・登壇者の声>
〇愛知・名古屋2026大会に向けて熱意をもって取り組む関係者やユースレポーターの姿に触れ、大変頼もしく感じました。本大会はアジア大会・アジアパラ大会が同一地域でセット開催される日本初の貴重な機会です。首都圏にとどまらず、地域の強みや魅力を活かしたスポーツ交流を全国・未来へと届けていってほしいと思います。
また、若い世代の皆さんにはSNSだけでなく、生の熱量を身近な人へ口コミで伝えていく発信にも期待しています。(スポーツ庁長官/河合 純一 氏)
〇パラスポーツの根幹は『人間の可能性への挑戦』です。自国開催となる愛知・名古屋2026アジアパラ大会では、道具やルールを工夫しながら高みを目指す選手たちの姿を多くの方に直接観ていただき、その本質的な価値を感じ取ってほしいと思います。
アジア圏での車いすラグビー普及にはまだ用具や環境面の課題が多くありますが、日本が培ってきた経験や『人を思いやる心』による信頼関係を強みに、持続可能な基盤づくりを推進していきます。(日本パラリンピック委員会 委員長/三阪 洋行 氏)
〇会場全体が『スポーツと未来』という一つのベクトルに向かって熱意でつながっていることを強く感じました。
地元・愛知名古屋での開催を機に、地域の人々がアジアに目を向け、相互理解が深まることを期待しています。
近年はパラスポーツを『知っている』段階から、一緒にプレーしたりサポートしたりと『関わる』人が増えるポジティブな変化を感じており、今後も障害の有無を超えて共に楽しめる機会を草の根からつくっていきたいです。(桜花学園大学 教授/認定NPO法人アジア車いす交流センター(WAFCA)理事長/寺田 恭子 氏)
■ 今後に向けて
SFTでは、愛知・名古屋2026大会を一つの契機とし、大会後もスポーツを通じた国際交流・協力や地域でのレガシー形成を持続可能な形で展開していくことを目指しています。
今回の「SFT未来会議」で生まれた新たなつながりや多様な主体による共創の芽を、一過性の取組で終わらせることなく、具体的なアクションへとつなげてまいります。
具体的なプロジェクトや取組の最新情報につきましては、以下の特設ページにて順次発信・更新してまいります。
▶ SFTレガシーアクション特設ページはこちら(東京2020大会を契機とした取組の継承・展開および今後のアクションを紹介)
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