【Players for Tomorrow】
「野球×ミャンマー」でネクストステージ!?

2017年12月18日

Players for Tomorrow

 「野球は、面白いスポーツだよ!と伝えられたら良いですね」と、まっすぐに向けられた視線と共に語られる思いの詰まった言葉の数々。一体誰に“野球”というスポーツを伝えていきたいのでしょうか?そしてなぜ“野球”なのでしょうか!?
 スポーツを通じた国際貢献・交流をしている「スポーツ・フォー・トゥモロー・コンソーシアム」(以下:SFTC)のコンソーシアム会員に、実際に行っている活動内容についてインタビューさせていただく企画。第3回目は、埼玉西武ライオンズに所属されていた元プロ野球選手の岡本篤志(おかもと あつし)さんに、ミャンマーでの野球普及活動について、お話を伺いました。

元埼玉西武ライオンズ 岡本篤志さん

 岡本さんは、2017年2月からミャンマーにて現地の子ども達や、ナショナルチームの選手達に野球の面白さを通じて、夢を持つことの大切さも伝える野球普及活動を実施されています。
 活動を始めたきっかけについて尋ねると、「オリンピックから野球がなくなってしまったことが1番のきっかけですね」。野球競技は、2012年ロンドンオリンピックより正式種目から外され、実施されていません。そのことが衝撃で《なぜ野球がオリンピック競技から外されてしまったのか?》を考えたところ、《国際大会に出ることが出来るレベルの野球チームを持つ国が少ないから》という結論に至ったそう。

 「世界で見ると、野球はまだまだ発展途上なのだと感じました。私の小学生時代に比べると、野球をやっている子どもたちが少ないことも感じていましたが、日本で野球普及活動をされている方たちはたくさんいらっしゃるので、アジアに目を向けました」。
 アジアの中でもミャンマーは、元国連職員の岩崎亨さんという日本人が“野球”を広めたという事実や、ミャンマー初のプロ野球選手が四国・徳島の独立チームに入団するなど、日本とのつながりも深いとのこと。
 「ミャンマーは国自体、あまり裕福ではないです。田舎の方は水道も通っていない場所もあるし、人身売買や孤児達も多い。スポーツを通じて、生きる活力を感じてもらえればいいなと思っています」と岡本さん。

 しかし現実は“野球”自体、知らない、見たこともない子ども達がほとんどだという。ミャンマーは最も盛り上がっている時で野球人口100人と言われています。岡本さんも現地に行かれて、認知度の低さを感じられたそう。道端で野球をやっていると「何それ!?やりたい!」と寄ってきて一緒に盛り上がることは出来ても、野球ボールを使った《遊び》が《職業》になるという考えにまで至らない。「日本はプロ野球という出口があるけれど、ミャンマーは出口がない。なんの為にこれ(=野球)やるの?という問いにいずれ応えていきたいですね。日本に行ってみたいと言ってくれる子ども達は多いですし、非常に高い運動能力を活かす場所がないだけですから」。
 ミャンマーには、体育の授業がないので体を動かす文化もないそう。野球もボールが遠くに飛んでいった時は盛り上がるけれど、ルールを理解することは難しい。遊びとして楽しむことをきっかけに、体を動かして、野球というスポーツも知っていってもらえたら。出口はミャンマーにはまだないけれど、入り口はたくさんありそうです。

ミャンマーの子ども達に野球を教える岡本さん

 岡本さんが特別講師として訪問したカエイ学園では、『夢授業』を実施しました。人として成長するために必要な夢=目標について、大きな目標に向かって、小さな目標を立てること、何より諦めないことが大事だと伝えると、授業後なんと子ども達全員から質問が!現地の子ども達の、何をするにも一生懸命な姿や、きちんと人の目を見て、黙って話を聞く姿に心が洗われたそう。
 岡本さんの《ネクストステージ》の1つ、スポーツ国際貢献は、「同じような元アスリート選手にとって良い目標になりますね」と言うと、「野球選手に関してですが、元プロ野球選手という誇りは忘れないで欲しいけれど、傲りは捨てた方が良いですね。ずっと1つのことをやってきた根性は誰にも負けないし、プロ野球選手にまで上り詰めるのは並大抵の努力では出来ません。そういう気持ちを持ち続ければ、次のステージでも輝けると思います」

ミャンマーの養育施設 Dream Trainで、子ども達と笑い合う岡本さん

 ミャンマーで“野球”を広められた岩崎さんと、ミャンマーの選手が手作りで作った球場に足を踏み入れた時は、初めて甲子園に行った時と同じような心がざわざわする感覚を覚えたという。
 「その球場で練習しているナショナルチームを見ていると、野球を始めた時の単純に楽しかった感情も蘇ってきたんです。野球の楽しさを伝えるためにも、まずは野球をやるメリットを教えなければなりません。きちんとお給料をもらえる職業になり得るという出口を伝えていきたい」と語る岡本さんは、夢だけではなく現実も同時に伝えることが出来る存在。
 ミャンマーの子ども達にとっての“野球”が、楽しい遊び・体を動かすきっかけから夢・職業と幅広く普及していくことで、世界の野球人口が増えていく。そんな大きな目標に繋がる岡本さんのミャンマーでの活動はきっと、野球に関わらず、子ども達の生きる活力にも繋がっていくことでしょう。

取材・文=大石百合奈

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