【Players for Tomorrow】
「ミズノ ヘキサスロン運動プログラム」で広がる笑顔

2019年4月5日

Players for Tomorrow

「私の短い人生におけるたったひとつの主眼にしようと腹をくくりました」。

スポーツを通じた国際貢献・交流をしている「スポーツ・フォー・トゥモロー・コンソーシアム」の会員団体のキーパーソンに、実際に行っている活動内容についてインタビューさせていただく企画。

第6回目は、総合スポーツメーカーであるミズノ株式会社 総合企画室 アジアグローバルセールスマネージャー 森井征五さんにお話を伺った。

森井さんが、人生の主要な目的にしようと心に決めたこととは「ミズノ ヘキサスロン運動プログラム」をアジアに広めていくこと。
ヘキサスロンとは、ミズノ株式会社が独自に開発した運動プログラムの名称。
ギリシャ語で6を意味するヘキサ(hexa)と、競技を意味するアスロン(athlon)を掛け合わせて造られた。
運動内容は、25m走、25mハードル走、立ち幅跳び、エアロケット投げ、エアロディスク投げ、ソフトハンマー投げの6種目。
この6種目を計測する「スポーツテスト」と、各種目を組み合わせて、走る、跳ぶ、投げるといった運動の基本動作を楽しみながら身につけることができる「遊びプログラム」で構成されている。

ミズノ ヘキサスロン運動プログラム」をアジアに広めていくために、森井さんが最初に着目した国はベトナムだった。
「ベトナムに興味を持ったのは5年前、きっかけはドラマでした。日本とベトナムの外交樹立40周年記念で制作されたドラマを観て号泣したんです」。

そのドラマは、後にベトナム建国の礎ともなる、ベトナムの民族主義運動指導者ファン・ボイ・チャウと日本人医師である浅羽左喜太郎(あさばさきたろう)の交流を描いたドラマだった。

「私は、ドラマを観て猛烈に感動しました。そして、ファン・ボイ・チャウという人物に非常に興味を持ちました。それと同時にベトナムにも興味を持ったのです」。
ドラマを観てから3日後のこと、ベトナムの代理店から取引依頼の電話が入った。ベトナムとの縁を感じた森井さんは、代理店の方と会うために初めてベトナムに降り立つこととなった。

「私は出会いを大切にしています。ご縁を感じてベトナムへ向かいましたが、ベトナムでは更に大きな出会いが待ち受けていたのです」。
その出会いとは、以前ベトナム教育訓練省大臣を務めたことがあるベトナム副首相との出会い。代理店の方の紹介だった。

「副首相が、小学校の見学を勧めてくださったんです。そこで、つまらなさそうに体育をしている子どもたちに出会いました」。
森井さんが目にしたベトナムの小学生は、ラジオ体操のような集団運動を指示されるままに行っていた。小学校1年生がつまらなそうにしていることに違和感を抱き、もっと好きなように動いて、楽しく運動したらいいのにと思ったという。
「子どもたちに体育の授業についてどう思っているか聞いたら、体育の授業は国語や算数のように板書を取らなくていいから楽だ、先生の顔を見て聴いているふりをしていたらいいんだと、体育を楽しんでいないことを実感しました」。

ベトナムには日本の砂場や運動場のような場所がなく、狭いタイル貼りの中庭しかない。スペースがない中で効率良く、楽しみながら体を動かす方法を伝えたい。
そう考えた森井さんは「「ミズノ ヘキサスロン運動プログラム」」をベトナム教育訓練省に提案しようと決めた。
そこから紆余曲折あったが、森井さんの熱意と森井さんを支える様々な方たちのサポートで、2018年9月、ベトナム初等義務教育への導入と定着に関する協力覚書締結に向けた式典が行われるまでに至った。
「感動して式典を見ることができませんでした。2時間のセレモニーで、大の大人が何人も泣いているシーンはなかなかないですよね。諦めずに提案し続けてきて良かったなと、今までの想いがよみがえって感極まる式典でした」。

現在、ベトナムの小学校、126校で「ミズノ ヘキサスロン運動プログラム」がトライアルとして導入されている。
プログラム導入後、子どもたちの変化について伺うと「私が変わったと感じることは、笑顔です。エアロケットもベトナムの子どもたちにとっては初めて見るものなんですよ。投げるのではなく、大体の子どもが地面を叩きます。こうやるんだよと投げて見せるとキャッキャッと笑って真似しますね」。

子どもたちの楽しそうな笑顔に救われることがあるという森井さん。
「セールスマネージャーという立場上、ビジネスとしてシビアにならないといけない場面もあります。しかし、ベトナムの子どもたちも私も同じ人間。上から目線や、変にへりくだる必要はありません。五分五分の交渉で、お互いに最適解を見つけることの大切さを学ばせていただいています。ベトナムの小学校は5年制。今後は、1年生以外の学年にも楽しんでもらえるプログラムや用具を、ニーズを聞きながら進化させていきたいと考えています」。

課題のあるところにニーズを見つけ、課題解決のお手伝いをすることで相手を笑顔にする。それは、お互い気持ちよく仕事をする上で必要不可欠なこと。
森井さんは、今後もアジアの子どもたちを笑顔にするため「ミズノ ヘキサスロン運動プログラム」という主眼を貫いていく。それは、ベトナムを始め、アジアの子どもたちのスポーツへの可能性が開ける未来に繋がっていくに違いない。

取材・文 大石百合奈

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