日本とASEANによるスポーツを通じたジェンダー平等推進事業:政策立案者・女性リーダー向けワークショップと世界女性スポーツ会議での国際発信(2022)

日本とASEANによるスポーツを通じたジェンダー平等推進事業:政策立案者・女性リーダー向けワークショップと世界女性スポーツ会議での国際発信(2022)1
日本とASEANによるスポーツを通じたジェンダー平等推進事業:政策立案者・女性リーダー向けワークショップと世界女性スポーツ会議での国際発信(2022)2
日本とASEANによるスポーツを通じたジェンダー平等推進事業:政策立案者・女性リーダー向けワークショップと世界女性スポーツ会議での国際発信(2022)3

© JUNTENDO.

【背景】
スポーツを通じた国際協力において、ジェンダー課題への取組は重要な分野の一つとされている。
2017年にロシアのカザンで開催された、UNESCO主催の「体育スポーツ担当大臣等国際会議(MINEPS)VI」では、「カザン行動計画」が合意され、SDGs ゴール5「ジェンダー平等」の達成に資するスポーツの役割も強調された。こうした、国際的な潮流を踏まえて、日本政府は、東南アジア諸国連合(以下、ASEAN)と連携を強化し、2017年に行われた「第1回日ASEANスポーツ大臣会合」において、「女性スポーツ実施率の向上」を含む4つの領域を重点分野とすることが合意された。さらに2019年には「第2回日ASEANスポーツ大臣会合」と併せて「日ASEAN女性スポーツ会合」が発足。日本がASEAN諸国のスポーツを通じたジェンダー平等推進を協働していくための政策対話枠組みもできた。
こうした流れを受け、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)期間中である2021年8月10日~13日に、スポーツ庁とASEAN事務局が主催となってJAIF(日ASEAN統合基金)により、「ASEAN-JAPAN Workshop on Promoting Gender Equality in Sports」が協働の具体的なアクションとして開催された。スポーツにおけるジェンダー平等を促進するために行われたこのワークショップでは、以下の2つの目的を達成することが掲げられた。
〇 ASEAN地域における女性と女児のスポーツ参加を促進するためのASEAN各国のアクションプランを策定する
〇 スポーツを通じたライフスキル・リーダーシップトレーニングを実施し、ASEAN各国の若年女性のエンパワーメントを図る

順天堂大学を配信拠点とし、ASEAN10か国から選ばれた70名がオンラインにて参加。ASEAN地域における女性スポーツの発展とスポーツを通じたジェンダー平等社会の実現を視野に入れ、ASEAN加盟国の政府関係者や、国内オリンピック委員会(NOC)の女性スポーツ委員会メンバー、若手の女性スポーツリーダーたちがオンラインで一堂に会し、活発な議論を繰り広げ、各国参加者がアクションプランの検討を行った。

【事業目的】
本事業は、こうした様々な取組を経た上で行われたものである。スポーツ界からASEAN諸国のジェンダー平等をさらに推進するために、下記5つを本事業の目的とした。
①ASEAN諸国と日本のさらなる連携の促進
②スポーツにおける国際的なジェンダー平等の理解推進
③2021年のワークショップで設定したアクションプランのフォローアップ
④スポーツ界から各国のジェンダー平等を推進する次世代リーダーの育成
⑤日本・ASEANによるジェンダー平等の取組の世界へ向けた発信

活動・事業内容

プロジェクト1: ASEAN事務局との連携強化と戦略立案

東南アジア10か国を取りまとめるASEAN事務局と連携を強化した。優先順位や各国の情報と公平性を担保しながら、どのように事業を展開していくか、戦略立案や事業の進め方に助言を得ながら、各国とのコーディネーションまで担っていただいた。具体的には、ASEAN事務局と定期・不定期の会議や日々のEメール等を通じて連携を強化。企画内容においてもコンサルテーションを受けました。また、2022年10月にタイで開催されたASEAN10か国の政府が集まる会議(日ASEAN女性スポーツ会合)に参加し、本事業の計画について各国政府にプレゼンした上で助言をいただいた。ASEAN10か国政府関係者に対し、「Sport for Tomorrow(SFT)」推進事業を通して、日本が継続的にASEAN諸国を支援していることを周知する絶好の機会となった。

プロジェクト2: 世界女性スポーツ会議への参加とASEAN諸国と連携したプレゼンテーション機会の創出

2022年11月14日~17日にニュージーランドで開催された第8回IWG世界女性スポーツ会議に、ASEAN10か国からそれぞれ1名及びASEAN事務局関係者2名が参加した。加えて、IWG事務局と交渉し、グループプレゼンテーションを実施する枠を獲得。ASEAN10か国からの参加者のうち、代表の1か国及びASEAN事務局が、前述の「ASEAN-JAPAN Workshop on Promoting Gender Equality in Sports」での成果と、各国の女性スポーツに関わる取組とその課題を発表した(オンデマンド、オンラインでの参加及び情報共有は、全10か国を対象とした)。世界各国の政府関係者や専門家、スポーツ関係者、アスリートやコーチなど、多様なスポーツリーダーに向けて、東京2020大会を見据えた日本のスポーツにおける国際協力と女性スポーツ政策への取組について発信した。
また、ASEAN10か国の参加者には、参加報告書の作成及び自国の関連団体へ内容の共有を依頼し、報告書の提出をもって評価モニタリングを行った。本会議全体を通して、ASEAN10か国及びASEAN事務局の関係者が、自国や東南アジア全体のスポーツにおけるジェンダー平等のためのアプローチを学び、世界中の様々な好事例に触れる良い機会となった。

プロジェクト3: 2021年のワークショップで設定したアクションプランのフォローアップ

各国の女性が置かれている状況は、文化・社会・宗教的な影響を受けており、国によって優先的に取り組むジェンダー課題は異なる。効果的なジェンダープロジェクトを実施するためには、各国の個別ニーズに応えながら、各国政府関係者と事業の企画立案をすることが不可欠である。そこで、前述した「ASEAN-JAPAN Workshop on Promoting Gender Equality in Sports」のフォローアップとして、ワークショップ内で各国政府が作成した女性スポーツ政策に関するアクションプランをもとに協働事業を実施。ASEAN事務局からの助言と各国の状況を鑑み、今回の対象国はタイとなった。国際的にスポーツ界のジェンダー平等を推進する団体や、女性スポーツリーダーを育成している団体などの国外ネットワークと、国内のジェンダーとスポーツに関する専門家などと連携し、タイ政府のニーズや希望に応えながら、フォローアップのワークショップを2日間にわたって実施した。

https://x.com/sport4tomorrow/status/1620243176165617665

プロジェクト4:タイの若年女性リーダーシップ研修のフォローアップ

事業3と同じくタイにおいて、若年女性リーダーに対し、スポーツを通じた女性のエンパワーメントワークショップを実施した。国内のジェンダー課題に特化した「開発のためのスポーツ(Sport for Development: SfD)」等の視点も含めながら、タイ政府と共にプロ
グラムを構築。グローバルネットワークや日本のネットワークから専門家も協力した.

https://x.com/sport4tomorrow/status/1621049304839503872

【成果】

〇 ASEAN事務局と密な連携を取り事業が進められたことは大きな成果であった。 5年計画で事業を進めていく上で、ASEAN事務局と連携を強化することは非常に重要であった。

〇 5年間の計画を日ASEANスポーツ高級実務者会合及び日ASEAN女性スポーツ会合にて共有し、承認をいただけたことも今年度の成果であったといえた。事業計画に承認を得られたことで、今後の各国へのフォローアップ事業が実施しやすい環境となった。

〇 フォローアップ実施の最初の国として、タイ政府と2021年「ASEAN-JAPAN Workshop on Promoting Gender Equality in Sports」時に定めたアクションプランに合わせた事業が実現できたことも大きな成果であった。

〇 今回のフォローアップワークショップを通じて、スポーツをジェンダーの視点で捉えることで、これまで当たり前とされてきたことを批判的視点で捉え、お互いに話し合う時間が作れたことは有意義であった。若年女性リーダー向けのワークショップに関しても、子どもの権利条約の話やセクシュアルハラスメントの話など、これまでスポーツのなかで話題にならなかったことを考えるきっかけになった。

〇  2022年11月に開催された第8回IWG世界女性スポーツ会議には、タイ政府とASEAN事務局の関係者が出席し、国際会議でASEAN諸国の取組を発信する機会となった。アジアやアフリカ地域からの参加が少なかった今回の国際会議において、タイ政府とASEAN事務局からの発表は、アジア地域の取組事例を発信する良い機会となった。

 

【参考URL】

スポーツを通じたジェンダー平等推進事業(2022)成果報告書

 


 

HP:ASEAN-JAPAN Actions on Sports 2022報告 | 順天堂大学 女性スポーツ研究センター (juntendo.ac.jp)

ASEAN事務局 Lalasati Indrawagita氏(プロジェクト2参加者)

参加者からのコメント :

ニュージーランドのオークランドで開催されたIWG会議に参加できたことで、インクルーシブスポーツに対する視野が広がり、日本やアメリカ、中東・北アフリカの成功事例など、ほかの地域でのプロジェクトの経験に基づく新しいアプローチを学ぶことができました。スポーツを通じたジェンダー平等推進事業のもと、ASEANの #WeScore キャンペーンの成果を発表することができ、大変光栄に思います。東南アジア地域の国々が、関連団体やスポーツ連盟への参加を通じて、今後数年間でスポーツにおける女性や少女の役割を高めるための協力を深めることによって、ASEAN共同体の構築や日ASEAN関係の強化につながることを期待しています。

実施期間
〇プロジェクト2:2022年11月14日~17日(8回IWG世界女性スポーツ会議) 〇プロジェクト3:2023年1月29日~1月30日(スポーツ関係者向けのワークショップ) 〇プロジェクト4:2023年1月31日~2月1日(若年女性リーダー向けのワークショップ)
実施エリア
〇プロジェクト2:オークランド(ニュージーランド), 〇プロジェクト3&4:バンコク(タイ)
実施組織
Juntendo University
協同組織
〇 ASEAN事務局 〇ASEAN加盟国: ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム
支援対象者数
495名 (プロジェクト1:52名, プロジェクト2: 354名, プロジェクト3:34名、プロジェクト4:55名)
PAGE TOP